高齢者施設等で「高齢者に感染対策」を周知徹底するために出来ること
認知症患者や高齢の利用者の多い高齢者施設等では、利用者とのコミュニケーションのあり方をより徹底する必要があります。
【記事】
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既に対策として声掛けなどを行っている施設スタッフの方も、再確認としてご活用ください。
【感染対策編】高齢者施設等における認知症の利用者とのコミュニケーションのあり方とは

高齢者施設等では、以下のような考え方から、一般的な施設とはまた別のコミュニケーションのあり方が求められます。
不安にさせない
高齢者・認知症患者においては、ある日突然状況が変わったことに不安や恐怖を覚えることが往々にしてあります。認知状態が低下している認知症患者の場合は特に顕著に見られる傾向です。そのため、大前提として利用者を不安にさせないようなコミュニケーションのあり方が求められます。
例えば、いきなり後ろから声かけをしたり、急いで感染対策や隔離を行う必要がある際に無言でケアをするなどといった行為は利用者を不安にさせる行為でしかありません。
可能な限りわかりやすく、また高齢者がきちんと説明を受けられるような環境づくりを行うことが重要です。
スタッフが普段と違う装いであることに留意する
感染対策を行っているとき、スタッフは普段と違う装いであることがほとんどです。例えば、マスクをすることにより顔が見えず、表情が分かりづらいことから認知症の高齢者は恐怖を抱きやすい傾向にあります。表情がわからないことにより職員が何と言っているかが理解できないケースもあります。
その他、ゴーグルなどをしていると担当の職員であるかどうかすら認識できないケースもありますので、普段と違う装いで利用者に接していることをスタッフ自身がきちんと理解することが求められます。
人権を尊重する
あってはならないことですが、感染対策を行う場合は限られた時間内、限られたリソースの中でイレギュラーな業務を行う必要があるため利用者個人の考え方を後回しにしてしまうことがあります。無論、利用者一人ひとりの要望を聞いていられないというケースもありますが、利用者の同意を得たりする”感染対策とは直接関係のない手間と時間”がかかることを念頭に置いておきましょう。
認知症の高齢者へ感染対策を周知徹底するためにできること

ここでは、認知症の高齢者へどのようにコミュニケーションをとって感染対策をスイッチ設定すべきかについて、そのあり方を提示していきます。
わかりやすい言葉での説明
理解しやすい・わかりやすい言葉で感染対策に関して説明をするのは、まず第一の考え方となります。感染症対策におけるマニュアルをそのまま理解してもらおうとするのではなく、本質的な部分で行動を促すように工夫することが、時には高齢者や認知症患者にきちんと行動を促し、感染対策してもらうための方法になるといえます。
-POINT-
例えば、特定の指定感染症の感染対策のために「手指衛生を行ってください」「アルコール製剤を利用してください」という話をする際、指定感染症に関する認識が難しいようであれば「風邪をひかないように手洗いうがいをしっかりしましょう」「風邪が流行っているので、アルコールできちんと消毒してくださいね」といったコミュニケーションのあり方も、結果的に感染対策の周知徹底に繋がるでしょう。
声かけの工夫
声かけの工夫も可能な限り行いましょう。例えば「時間だから手指衛生をしてください」「アルコール消毒をしてください」などルールに基づいて行動を促すと、認知症の高齢者は時に不安に感じたり、拒否につながる可能性があります。
また、記憶の部分で差し支えがあるケースの場合、一度説明をしただけでは理解ができず、何度も同じ行動を繰り返してしまうことはよくあることです。
この場合も、何度でも説明することを肝に銘じて理解を得ることを重視しましょう。特に感染症対策は反復的・継続的な行動が必要です。
ジェスチャーを多用する
声かけの際、ジェスチャーを多用するのは効果的な方法のひとつです。先述した通り、感染症対策下にあるスタッフは普段とは見た目が異なります。そのため、ジェスチャーを多用することでより理解を深めてもらえるように工夫すると良いのです。
例えば「手を洗ってください」と指導・依頼する際には手を洗うジェスチャーを加えたり、症状を確認する際には額に手を当てて熱がないかどうか確認したり、視覚と聴覚の両方に訴えかけるような声かけ・コミュニケーションをとることが重要です。
共感を忘れない
時には、感染症対策というイレギュラーな行動をとってもらうにあたり、利用者から拒否が出ることがあります。拒否が出た場合には、まず共感を忘れないようにしましょう。決まりだから絶対にこうしてください、というようなコミュニケーションでは、さらに利用者の不安を煽ってしまったり、拒否を増大させてしまうことにつながりかねません。共感を忘れず、拒否の反応が出た場合にはその拒否そのものに共感し、寄り添い、そして行動を促すことが重要です。
教科書的な表現になってしまいますが、実際の現場でもかえってこの方が効率的に業務を推進することが可能です。

言葉に意識的に抑揚をつける
マスクを着用して会話をすると、若い人たちでも、相手が何と言っているがいまいち聞き取りづらかったりで理解できないことがあります。高齢者や認知症の利用者に対応する時には、特段の注意が必要です。具体的な対策の一つとして、言葉に意識的に抑揚をつけるという方法があります。抑揚をつける方法ですが、例えばイメージ的にミュージカル俳優になりきって相手に言葉をかけるのがよいでしょう。
そうすることで今は自動的に言葉に抑揚がつき、重要なキーワードを利用者が聞き取りやすく・理解しやすくなります。
理解度を踏まえた個別の説明
全世界的な未曾有の事態ではありますが、認知症の利用者や高齢の利用者は、このことを理解できないケースもあります。認知状態や精神状態によっては「なぜいま感染対策を行わなければならないのか」が理解できないというケースも想定されるわけです。
そのため、利用者それぞれの理解度や認知状態を踏まえて個別の説明を行うこともまた、重要な考え方の一つです。
例えば、比較的認知状態がはっきりしている利用者についてはフラットに指定感染症が感染拡大しており、クラスターが発生するリスクがあるので、感染対策の徹底に協力してほしいといった伝え方でも良いでしょう。その方がより理解が深まり、感染対策に協力的になってもらえる可能性があります。
反対に、現在の状況や周囲の状況を理解することが難しい利用者の場合には、先述の通り必ずしも指定感染症のことではなく一般論として「風邪が流行する時期なので、手洗い・うがい・マスクの着用をしっかりとお願いします」といった説明で感染対策を周知徹底すると良いでしょう。
まとめ

限られたリソース、限られた人員で感染対策を周知徹底するためには、今回ご紹介したような様々な工夫を取り入れることが求められます。
人的リソースが足りない場合は、思い切って除菌業者に作業をお願いすることでスタッフの負担を減らし、見えないコストを減らすことも可能です。